学習の定義
心理学における学習の定義:経験による行動の変化
この定義をAIに適用すると、おかしなことになります。
例えば、生成AIがランダムな文字列しか返答しなくなることも「変化」です。
試験成績が悪くなる変化を、普通は学習と呼びません。
そこで、次のように定義するのが妥当でしょう。
学習の定義:推論でより良い回答を出せる状態への変化
良い回答とは何なのかは、自由に指定できます。
単純に情報を丸暗記で記憶するだけでも学習になります。
既存の情報から規則性を見つけるだけでも学習です。
学習と思考の分類
AIの学習というと事前学習のイメージが強いと思います。
事前学習とそれ以外の学習は、次のように分けられます。
事前学習:解くべき問題が明確になる前の学習
(訓練フェーズでの学習)
怠惰学習:解くべき問題が明確になった後の学習
(推論フェーズでの学習)
また心理学では思考について次のような分類があります。
速い思考:直感的な思い付き。精度が悪い
遅い思考:意識的に行う論理的な思考。精度が良い
ただし、思考と学習は同じではありません。
思考中は、何かの答えを出そうと推論しています。
学習と思考(推論)の関係
推論と学習の関係は次のようになります。
事前学習 | 怠惰学習 | 精度 | |
速い思考(推論) | ○ | × | 悪い |
遅い思考(推論) | ○ | ○ | 良い |
速い思考は、問題が与えられた瞬間に思いつくことができるので、怠惰学習はしていません。
遅い思考は、問題が与えられた後に、より良い答えを思索するので、怠惰学習もしています。
事前学習のみよりも、加えて怠惰学習もしている方が、精度は良くなります。
人間とAIが行う学習の違い
人間やAIが行う学習を表にまとめました。
事前学習 (訓練フェーズ) | 怠惰学習 (推論フェーズ) | |
人間 | 〇(速い思考) | 〇(遅い思考) |
普通のAI | 〇 | × |
理想の知能 | 不要 | 〇 |
AIには推論フェーズで学習するものもありますが、事前学習の延長線上の学習です。
一方、人間の速い思考と遅い思考は、別メカニズムです。
いくら事前学習のデータを増やしても、人間の意識のような怠惰学習のできないAIは、精度に限界があります。
また、理想の知能は無限の計算能力を持っている想定なので、事前学習する必要がありません。
問題が与えられてから学習を始めた方が、その問題に特化した効率よい学習ができます。
コメント